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2010年12月13日
 ■ 会議は「成功」、気候対策に「失敗」―COP16

 COP16が終わりました。全体を一言で評価すれば、国際会議としては「成功」、気候対策としては「失敗」と言わざるを得ません。

 「失敗」の最大の証は、京都議定書の第1約束期間が終わる13年以降の新たな法的拘束力ある枠組みが合意されなかったことです。加えて、それを代替する「京都議定書」の延長も合意されませんでした。代わりに米や新興国の参加の必要性が強調され、法的拘束力のない(弱い)枠組みが前面に出されてきました。

 新興国(インド、中国、ブラジル、南ア)が受け入れた「排出緩和」の「検証」は、アメリカが強く要求していたものですが、これには法的拘束力はありません。自主申告です。アメリカ、日本など先進国が「コペンハーゲン合意」にそって「自主申告」した「削減目標」も付属機関の文章に記されましたが、これも法的拘束力はありません。

 途上国の多くは「先進国の歴史的な責任」を明確にうたった「京都議定書」の枠組みを守り、その弱点(市場メカニズム)を改善することを求めています。そのために、先進国が13年以降も、気温上昇1.5度未満に押さえるのに必要な大幅な温室効果ガスの削減を求めています。

 こうした途上国の要求に対して日本政府は真っ向から敵対しました。13年以降の枠組については、米・中も参加する「新たな議定書」以外は認められない、という立場で「京都議定書の延長」に反対しました。経済成長を優先させるために、「先進国の歴史的な責任」と「削減義務の割り当て」を拒否し、法的拘束力のない「自主申告」での削減という枠組みに、全体を「転換」させようという目論見です。COP開催中に2度に渡って「化石賞」を贈られたのは当然のことです。

日本が化石化しているのは「外交」だけではありません。日本国内での「気候大反動」もとどまるところを知りません。「排出量取引の議論、当面凍結へ」という方針も検討されはじめました。

 「政府は日本国内で取り組む温暖化対策の柱である国内排出量取引制度について、導入に向けた検討を当面の間、凍結する方向で最終調整に入った。COP16で2013年以降の国際的な枠組みが固まらなかったうえ、負担増を警戒する産業界に配慮し、国内外の環境が整うまで議論を棚上げする。」(日経サイト)

 排出権取引それ自身が「経済」と「環境」を「両立」(?)させようという方法であり、温暖化対策の決め手とはなりませんが、それすら「産業界に配慮し」て「議論を棚上げ」する。このまま行けば、20年までに25%削減という「自主申告」も新たな世界的な枠組みができないことを口実に、いずれ撤回されるでしょう。(今でも拘束力のあるものではないですが)

 来年の南アフリカのダーバンでの開催されるCOP17にむけて、気候対策に限らず、日本の社会・経済をどうしていくのか、日本は大きなを曲がり角にきています。私たち民衆運動の側がどのようなオルタティブ(脱成長)を提示できるか、まさに真価が問われる一年になりそうです。


■以下、関連サイトの紹介

1、カンクンでの南側民衆、農民、先住民、クライメイトジャステスなどのNGOの抗議行動は、ジュビリー関西のサイトが写真入で紹介しています。
  http://d.hatena.ne.jp/Jubilee_Kansai/

2、「ボリビア政府の声明」
  最後までカンクンの合意文書に抵抗したボリビア
  http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2010/12/post-0c7c.html

3、「声明」カンクンパッケージ、決裂は避けても京都議定書を失う恐れ
  FoEインターナショナル声明(2010年12月11日)
  http://www.foejapan.org/climate/doc/COP16_1211.html

4、「声明」COP17/CMP7で拘束力ある包括的合意を!!!
  地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)
  http://www.bnet.jp/casa/cop/cop16/seimei.pdf

5、COP16/CMP6、「カンクン合意」を採択 
  南アフリカCOP17の 最終合意へ、道を拓く
  2010年12月11日  気候ネッ トワーク
  http://www.kikonet.org/iken/kokusai/2010-12-11.html

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