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2010年05月16日
 ■ 先進国に「気候債務」の返済求める/ボリビアで「もう一つの気候会議」

 昨年のコペンハーゲンCOP15の失敗によって、京都議定書以降の国際的合意づくりが頓挫している中、四月十九日~二十二日、南米ボリビア・コチャバンバにおいて「第一回気候変動とマザーアース(母なる大地)の権利に関する世界民衆会議」(もう一つの気候会議)が開催された。日本の大手メディアはほとんど報道しなかったが、一四二カ国から三万五千人を超える人々が集まり、今秋メキシコのカンクンで予定されているCOP16にむけて、気候変動の影響を最も受ける南側・途上国民衆の声を結集する場となった。

 会議は今年一月ボリビア多民族国のエボラ・モラレス大統領がよびかけたもの。開会式で大統領は、気候変動は資本主義システムの産物であることを指摘し「資本主義が死滅するか、さもなくば、地球が死滅するかだ」と演説した。

 会議では「森林と気候変動」「水と気候変動」「気候債務」「資金提供」「排出権市場」など十七のワーキンググループに別れて、ポスト京都議定書にむけた戦略と政策提言が話し合われた。ここでの確認はカンクンでのCOP16に正式に提案される。

 二十二日の最終日には、これらの対案を総合した「コチャバンバ合意」(民衆合意)が採択された。「民衆合意」は先進国政府・企業・一部科学者を「気候変動の原因である資本主義システムを問うことなく、単なる気温上昇の問題として議論させようとしている」と批判した。そして「人間と自然との調和、人々の間での調和を再び成り立たせる新しいシステムを生み出す」と宣言した。その源となる「母なる大地の権利のための世界宣言」を国連で制定するよう求めた。

 また先進国対しては、歴史的な「気候債務」を認め「これまでに排出されてきた温室効果ガスによって占められている大気中の空間を開発途上国に対して解放する」「大気の脱植民地化」を要求した。

 さらに「民衆合意」は、気候変動国際裁判所の設置、来年四二十二日に温暖化問題の具体的な方策を問う、全世界一斉住民投票を行うことを決めた。これは「資本主義のシステムの変更」や「軍事予算削減し気候変動費回す」などの是非を問う内容。政府機関だけではなく、社会運動団体も参加・実施できる。

 ボリビアで開催された「もう一つの気候会議」は、気候変動の解決をめぐって「資本主義的な手法」と「もうひとつの手法」の分岐があることを示す画期的なものとなった。

 先進国に「援助」ではなく「環境債務」の返済を求めるこの運動に連帯しなければならない。

 それは、これまで通り大量生産・大量消費を続けていくことではもちろんないが、重厚長大産業から低炭素産業にシフトして、環境と成長を持続させる「低炭素経済への道」でもない。最も被害をうける当事者と「発展」を分かち合える水準にまで、先進国の経済規模と生活スタイルを改める「脱成長・定常型社会」への選択こそ、これに応える道であろう。

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コチャバンバ会議・合意文書は「開発と権利のための行動センターのブログ」に掲載されている訳文を参照しました。

http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2010/04/post-c4fb.html

*この文章は『グローカル』6月1日号に掲載予定のものです。

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2010年05月14日
 ■ マスコミでは報じられない「国外移転」への動き

 マスコミではあまり取りあげられないニュースですが、与党議員でつくる「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」に参加する民主党の6名の議員が、5月7日から9日まで、グアム・北マリアナを訪問し、知事や市長と懇談しました。訪問は、海兵隊の受け入れに前向きな現地の知事らが招請したもので、知事らは民主議員らに鳩山首相への「親書」を託しました。

 訪問に先だつ7日の記者会見と、訪問後の10日の記者会見の様子がyoutubeにアップされています。(資料4、5 のリンク)

 7日の記者会見を見ると、当懇談会は4月20日に鳩山首相あてに普天間問題の解決のためのペーパー(「2010年5月 日米合意の内容について」だったかな?)を提出した、と報告しています。そこでの解決の方向は、大まかに言うと、普天間に関する日米間の二つの約束ごとのうち、

(1)グアム協定は強化する
(2)SACO合意・ロードマップは改定する

 というものです。グアム協定の「強化」とは、要するに、グアム統合計画を推進するために日本がもっとお金を出す、ということです。SACO合意・ロードマップの改定とは、新基地は作らないということです。

 沖縄でも本土でも、どこの自治体も新基地を受け入れる可能性は皆無なわけですから、アメリカにとっても「解決」の方向は「国外移設(グアム・テニアン)」以外にはありません。それよりも何もアメリカ自身が「海兵隊のグアム移転は抑止力強化のため」と言っているのですからなおさらです。

 また、「抑止力」が好きな日本政府にとっても、「抑止力」を維持するために、本土をふくめたすべての国民が等しく負担する方法(=国民の血税である税金であがなう)は「理」にかなった「解決」のはずです。

 マスコミに無視されて、まだ、大きなうねりにはなってはいませんが、かつて鳩山が会長を務めた「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」が、外務省と防衛省に公然と反旗を翻す行動に出たことは(「米軍基地はアジア太平洋地域にいらない!」という原則的な立場とは違うとは言え)大いに注目すべきことだと思います。

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<資料1> 10日の記者会見の報道(その1)
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【琉球新報】2知事、首相に親書 米グアムと北マリアナ 2010年5月11日

 【東京】与党議員でつくる沖縄等米軍基地問題議員懇談会会長の川内博史衆院議員(民主党)らは10日、首相官邸に佐野忠克首相秘書官を訪ね、普天間飛行場移設受け入れに前向きな米グアムのカマチョ州知事と北マリアナ連邦のフェテル知事から鳩山由紀夫首相あての親書を手渡し、移設先としてグアム・北マリアナを検討するよう求めた。13日に来日する両知事と鳩山首相の面談も要請した。
 親書の内容については明らかにされていないが、川内氏は「日米両政府が抱える問題解決のための懸け橋になる用意があり、海兵隊を歓迎するという趣旨の発言があった」と説明した。
 官邸への要請に先立ち川内氏らは北マリアナの視察内容を報告。「辺野古建設をやめて、国外移設を強く目指してほしいと申し入れたい」と述べ、5月末の政府決着はグアム・テニアンへの移転という方針にすべきだと強調した。
 瑞慶覧長敏衆院議員は「向こう(北マリアナ)に移設する可能性はますます高まった。県内あるいは県外は可能性はまったくない。可能性があるところを目指すべきだ」と鳩山首相の翻意を求めた。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-161903-storytopic-53.html より

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<資料2> 10日の記者会見の報道(その2)
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【毎日】普天間:北マリアナ知事が親書 海兵隊受け入れで会談要請

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題を巡り、与党系議員で作る「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」会長の川内博史・民主党衆院議員は10日首相官邸を訪れ、視察先のサイパンで会談した米自治領北マリアナ連邦のフィティアル知事らから受け取った鳩山由紀夫首相あての親書を佐野忠克首相秘書官に手渡した。

 親書の内容は明らかにされていないが、川内氏は知事らが「日米が抱える基地問題を解決する用意がある。海兵隊の皆さんを歓迎する」と語ったと説明した。「13日に来日し首相と会いたい」という知事らの意向を伝え、日程調整を要請した。

 川内氏は議員懇メンバー5人と8日、フィティアル知事のほかグアムのカマチョ知事、北マリアナ連邦テニアン島のデラクルス市長と会談した。川内氏によると、フィティアル知事が「海兵隊を歓迎する」などと発言し、他の2氏が同意したという。米軍はテニアン島で沖縄から移転した海兵隊の訓練を行う計画だが、知事らは「訓練だけでなくその他の駐留も受け入れる余地がある」とも述べたという。【野口武則】

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100511k0000m010074000c.html より

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<資料3> 関連する情報 (キッコのブログより)
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「鳩山首相への2知事の面会を官邸が拒否」(世田谷通信)

 沖縄の普天間飛行場の移設問題で、飛行場と海兵隊の受け入れに前向きなグアムのカマチョ州知事と北マリアナ連邦のフェテル知事が、13日に来日し鳩山由紀夫首相と面会したいと希望していたが、鳩山首相も面会を希望したのにも関わらず、官邸サイドが面会を拒否していたことが分かった。

 与党議員でつくる「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」の会長、川内博史衆院議員をはじめ民主党の有志6名は、7日から9日までテニアンとサイパンを視察し、両知事から鳩山首相宛ての「移設先はぜひテニアンにして欲しい」という親書を預かって来た。

 この親書には「13日に来日するので面会して欲しい」ということも書かれており、鳩山首相も両知事との面会を希望したが、官邸サイドがこれを拒否し面会は先送りにされた。

 北マリアナ州のフェテル知事はホワイトハウスから呼ばれているため、13日に鳩山首相と面会し、16日に訪米する予定になっていたが、今回の官邸サイドの異例の面会拒否により、鳩山首相とは面会できないままワシントンへ向かうことになった。(2010年5月12日)

http://kikko.cocolog-nifty.com/kikko/2010/05/post-9992.html より

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<資料4>5月7日、記者会見の模様
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・100507米軍基地問題議員懇談会会見1.flv
 http://youtube.com/watch?v=99Y5kecDxDo&feature=related

・100507米軍基地問題議員懇談会会見2.flv
 http://youtube.com/watch?v=tz1eIpweh6U&feature=related

・100507米軍基地問題議員懇談会会見3.flv
 http://youtube.com/watch?v=BA5nWXPETRU&feature=related

・100507米軍基地問題議員懇談会会見4.flv
 http://youtube.com/watch?v=2aWuSdb3qkU&feature=related

・100507米軍基地問題議員懇談会会見5.flv
 http://youtube.com/watch?v=o3kYGBcpNdw&feature=related


<資料5>5月10日、記者会見の模様

・100510米軍基地問題議員懇談会会見1.flv
 http://youtube.com/watch?v=jCLCFcnB1UQ&feature=related

・100510米軍基地問題議員懇談会会見2.flv
 http://youtube.com/watch?v=z2e0RkQDzmQ&feature=related

・100510米軍基地問題議員懇談会会見3.flv
 http://youtube.com/watch?v=5FEScTAH5AQ&feature=related

・100510米軍基地問題議員懇談会会見4.flv
 http://youtube.com/watch?v=bHKVhQOHVo8&feature=related

・100510米軍基地問題議員懇談会会見5.flv
 http://youtube.com/watch?v=QdU3k37IAtg&feature=related

・100510米軍基地問題議員懇談会会見6.flv
 http://youtube.com/watch?v=wCm9DQJEtJ4&feature=channel

・100510米軍基地問題議員懇談会会見7.flv
 http://youtube.com/watch?v=3Bz1IQ_Mtek&feature=channel

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2010年05月03日
 ■ デモに「風呂」が登場!/4、29 逃散・不服従メーデー

 メーデーは5月1日と決まってたのは昔の話し。最近は開催日が分散する傾向です。先鞭をつけたのは「連合」。ゴールデンウイークの初日(4月29日)に定着しているようです。

 私が今年参加したメーデーも4月29日に行われました。しかし大企業の労組の集まりである「連合」とは対照的な、不安定雇用にある人々を中心にしたインデーズ系のメーデーです。

 日差しはあるが、風が強く、少し肌寒い「昭和の日」の午後。京都の繁華街、四条河原町を二筋下がった東側にある「仏光寺公園」に人々が三々五々、集まってきました。その数最終的に約100名ほど。

 すでに色々なプラカードや横断幕が公園に並べられていますが、これがメーデー会場だと気付く通行人は少ないはずです。何故なら、ここにはメーデにはつきもの「労働歌」が流れていません。恒例の「大幅賃上げを勝ち取るぞ!」などというスローガンもありません。そして、集まってくる人々は、人生のスタートを切って間もないか、今、まさに切ろうとしている若者が圧倒的なのです。おそらく連合系のそれにも、また全労連系のそれにも、参加した体験のない若者たちによる「手作りのメーデー」。題して「逃散・不服従メーデー」のはじまりです。

 とは言っても力強い演説が延々と続く、というものではありません。主催団体の「ユニオンぼちぼち」「反戦生活」「ユニオンエクスタシー」の3団体のメンバーが、普段通りの口調であいさつ。

 「祝日であっても、多くの仲間が働いており参加できません。祝日をふやすよりも、有給休暇がとれるよう現実を変え、自分の時間を取り戻したい」などなど。

 そのあと「模擬団交」の寸劇。残業代を払わない引っ越し屋の社長を、団交で追いつめていくストーリー。

 「ウチは30分単位でしか残業代払わないから、28分で仕事が終わったら、グズグスせずタイムカードを押せ」。

 「分の世界」で賃金をもらった経験のある人にとっては、リアル過ぎる言葉。団交の中で「30分単位の支払い」に法的な根拠がないことも明らかになり、勉強になります。

 続いては、色々な団体・個人の発言が続きます。
 「反学費会議」という団体の学生の話し。学費を払わないとはなんと反社会的な! と思うなかれ。大学の学費は無償であるべきだ、ということを訴えているのです。親の経済力の違いで子どもの選択が狭められる社会はおかしい、と。

 また「保護者団」の女性の発言にも考えさせられます。
 一人で子育てをしてきたが「一人で保護者をやるはヤメ!」。「保護者団」を募集して今は数人で子育てをしているそうです。ところが子どもが不登校。フリースクールに通っているのですが、その費用を行政に要求しているそうです。
 また、最近は子どもが「習い事」をしたいと言い出し、回りの母子家庭のアドバイスは「子どもに親の立場をわきまえるように説得せよ」。しかし、親の貧困が原因で、子どもの進路が決まるのは納得できない…。

 うーん。

 徹底して社会の側に問題を投げ返して行こうという立場はわかります。しかし、貧困層はエリート層とは違う、別の文化を形成していく道筋もあるんじゃないでしょうか。その文脈で「わきまえ」ることは闘いかも。でも難しい問題ですね。

 発言が終わったあと、メーデーはいよいよデモ行進に。そのデモの中にな・な・な・んと「風呂」が。私が知る限り、日本人民闘争史上初めてデモに「風呂」が登場したのではないでしょうか。

 シュプレヒコールもイケてました。宣伝カーからは、通行人に向かって、「みなさん、私たちは不埒なデモ隊です。シュプレヒコールも変わっています。ぜひ、この変わったシュプレヒコールをお楽しみ下さい!」

「失業保険をもっとよこせ!一生失業保険でい生きたい!」
「婚活なんてクソくらえ!」
「女性を結婚に追い込むな!
「働きたくない!」
「忙しい生活は貧困だ!」
「テレビ漬けの生活は貧困だ!」
「金をかけずに楽しむ時間を持とう!」
「怠ける権利をうばうな!」
「頑張る人生から降りよう!」
「逃散上等!」

(もっとぎょうさんありますが、略)

 生の声で「常識」と「体制」に挑戦する! そんな意気込みが「昭和の日」の京都の街にしっかりとこだました一日でした。

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