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2013年11月15日

 ■ なぜ今「特定秘密保護法」なのか、を理解する二つのキーワード

 特定秘密保護法案に反対する世論と運動が、この一週間で急速に大きくなってきたように思います。私が住む京都でもいくつもの集会が準備されていますので、下に貼り付けておきます。

 その前に、この特定秘密保護法案を私がどう見ているか、を書いておきます。私は、ごく大ざっぱに言って、この法律の産みの親(まだ産まれてないけど)は日米安保体制だと思っています。そうです、今の安倍の動きは、日米軍事再編の中から導きだされてきています。そうした状況を理解するキーワードは二つ。「GSOMIA」と「JASBC」。

 一つ目の「GSOMIA」はジーソミアと読みます。「General Security of Military Information Agreement」(包括的軍事情報保護協定)の略です。日本はアメリカとの間に2007年8月に、GSOMIを結びます。日米間の協定の名称は「秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」という長ったらしい名前です。

 ようするに米日間で軍事情報を提供し合う際、日本の軍事情報保護のレベルをアメリカ並に引き上げることを約束したものです。つまり、「日米軍事一体化」を進めるために、この対米協定の国内法版として出されてきているのが、今回の特定秘密保護法案なのです。これで軍同士だけでななく、これまで米国でやっていた日本配備の米艦船のメンテナンスを、日本の企業が請け負うことができ、経済的にも日本の軍需産業が潤うことになります。(本当にそうなるかどうか、米国の失業問題もからむからビミョー)。

 ネットで「GSOMIA」を検索すると色々なことがわかりますが、PP研のwebに山口響さんがざくっとした解説を書いていますので、参照してください。

「特定秘密保護法案になぜ反対するか」
   山口響(ピープルズ・プラン研究所運営委員)
http://www.peoples-plan.org/jp/modules/article/index.php?content_id=158

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 でも「日米軍事一体化のさらなる強化、となかんとか言って批判しているけど、左翼はもう何十年も前からそういう批判をしているんじゃないか」といぶかしがる方も多いと思います。

 そうなんですよね。左翼は万年「戦争危機論」で来たので「平和」が続くと力と信用を失っちゃうんです。また、「日米軍事一体化反対」を叫ぶ方も、今の日米安保の実態、つまりアメリカのどんな戦略の中に日本が位置づけかれ、どこの国との戦争を想定しているのか、いまいち理解していない人が多いんですよね。

 このあいまいな認識を、ぐっと現実に近づけるのに役立つキーワードが、二つめに示したキーワード「JASBC」です。読み方はとくにありません。「Joint AirSea Battle Concept」の略です。直訳すると「統合・空海作戦・構想」となりますが、一般的には「エアシー・バトル構想」とよばれています。

 「エアシー・バトル構想」は現在のアメリカの太平洋戦略の要になっている構想です。 簡単にいうと、内陸国家から海洋国家化への転換をすすめる中国が、西太平洋にアメリカが軍事的に進出(アクセス)できないような拒否、阻止戦略をとっている(西太平洋に第一列島線や第二列島線などの阻止線を策定)ことに対して、アメリカが、これを軍事的に打ち破る力を、西太平洋の同盟国(日本、韓国、ニュージーランド、オーストラリアなど)と一体となって形成しようという構想です。(旨く説明ができたか不安)。

map.jpg 

 このアメリカを中心に、中国との戦争に備えて多国間ですすめる軍事一体化が、日本国内において、集団的自衛権問題や、国家安全保障会議、そして今回の特定秘密保護法を浮上させている、と私は見ます。

 この「エアシー・バトル構想」の中で日本の自衛隊は今、アメリカの中国抑止の軍事作戦をどこまでも肩代わりしてになって行こうとしています。尖閣など島嶼の防衛の強化も、日本人の「領土」意識に訴えていますが、本質的にはアメリカの「エアシー・バトル構想」での、中国の「第一列島線」への肉薄戦です。またフィリピンへの自衛隊の派遣も中国の阻止線への軍事部隊の派遣の既成事実づくりで、アメリカンの「エアシー・バトル構想」にとって好都合というわけです。

 でも、平和運動家の中に「エアシー・バトル構想なんてはじめて聞いた」という人がいても不思議ではありません。なんせ民主党政権時代に、防衛大臣だった田中直紀氏が「エアシー・バトル構想をどう理解しているか」と小池百合子に聞かれて、しどろもどろになったことがありました。時の防衛大臣も「エアシー・バトル構想」を知らなかったのです。

 幸いなことに、この「エアシー・バトル」の概略と、それに対する民衆の対応について、これもピープルズ・プラン研究所の武藤一羊さんが、水準の高い分析をしたためています。いくつかありますが「『アメリカの太平洋時代』」とは何か─米中『複合覇権』状況の出現と非覇権の立場」「季刊ピープルズ・プラン」58号)が、まとまっています。webでも読めますので、精読をお薦めします。
  http://www.peoples-plan.org/jp/ppmagazine/pp58/pp58_muto.pdf

 また、海上自衛隊関係の論文もお薦めです。(武藤さんも参照しています)
 「エアシー・バトルの背景」(八木 直人)
 http://www.mod.go.jp/msdf/navcol/SSG/review/1-1/1-1-2.pdf

 秘密保保護法案を「戦前の闇黒政治の再来」というようなレベルで批判する人が多く、煽動の文句としては間違ってはいませんが、宣伝の中身としては「ジーソミア」(総括的軍事情報保護協定)と「エアシー・バトル」の危険性を訴え、反安保闘争の新たな地平を構想する必要があるように思います。

 とは言え、個人的には、やりたいことが山ほどあり、時間だけはない、という状況が続いており、ごまめの歯ぎしりの日々です。

★京都での集会

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<憲法を活かす会  学習会のご案内>
■日時: 11月22日(金) 午後6時30分より午後8時50分まで
■場所: ウイングス京都 会議室1
      (四条烏丸東洞院上る 四条烏丸から徒歩5分)
■参加費: 300円
■講師: 澤野義一さん(大阪経済法科大学教授)
■演題: 「憲法9条と集団的自衛権見直し論議」
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 <緊急講演会企画だれのための「秘密」なのか
スノーデン事件と秘密保護法からはじまる監視社会>
・とき 11月24日(日)午後1時(開場12時30分)
・ところ 京都弁護士会館地下大ホール
・入場無料
・講師 臺 宏士(だい ひろし)さん
 毎日新聞社会部記者。1966年埼玉県生まれ。 早稲田大学卒。
90 年毎日新聞社入社。著書 に『個人情報保護法の狙い』(緑風出版)ほか。
・主催、市民ウオッチャー京都/京都・市民オンブズパース委員会
/全国市民オンブズマン連絡会議
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<11・29秘密保護法を考える緊急学習会>
「原発問題と特定秘密保護法」
■日時:11月29日(金)午後7:30
■場所:キャンパスプラザ京都 第3会議室
■講師:小笠原伸児 弁護士(自由法曹団、「憲法9条京都の会」事務局長)
●講演:「秘密保護法で隠蔽される原発情報―脱原発・原発ゼロ運動にとっての特定秘密保護法の危険性を考える」
■資料代:500円
■主催:原発問題と特定秘密保護法を考える京都府民有志(募集中!)
連絡先:高取利喜恵(08015230117)

投稿者 mamoru : 2013年11月15日 20:29

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