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2009年12月11日

 ■ COP15に期待せず!「技術革新+排出権市場」ではCO2半減はできない!

 COP15がコペンハーゲンで開かれています。温暖化問題でがんばっている人には申し訳ないですが、私は、COP15にまったく期待していません。というのは、私は、「温暖化防止」については「懐疑論者」だからです。

 いやいや、地球温暖化を否定したり人為説を否定したりする「懐疑論者」ではありません。そもそもそういうレベルでの科学的な知見はありません。しかし素人は素人なりに日常的な感覚に基づいて気候問題をながめてみると、G8や締約国が全世界に約束している「2050年=半減」「気温上昇を2度未満に抑える」は、「コリャ無理だな」と「懐疑的」に思わざるを得ないのです。

 なぜなら、COP15に集う者の半分は、そもそも温暖化を真剣に防止しようという気持がないように見えます。アメリカや日本の半分(財界)がそうです。また、温暖化防止を真剣に考えているように思えるもう半分の人たちも、やり方がまったく間違っているように見えます。

 温暖化対策を真剣に考えている人たちの多くは「環境技術のイノベーション+排出権市場」という組合せで、温室効果ガス(主にCO2)の削減を構想しているようです(グリーン・ニューディール)。

 2050年段階、2020年段階で「必要とされるサービス需要」にこたえるエネルギーを賄いながら、なおかつ、CO2の排出を半減するそうです。ということはエネルギー効率を少なくとも二倍以上にする、ということです。現在の日本の技術イノベーションの進歩度は年1%だそうで(イギリスは3%)40年で2倍化は無理です。

 このことは技術・コスト分野の現場にいる人が一番よくわかっていることでしょう。だから、技術イノベーションを削減の中心にすえて2050年=半減、2020年=25%削減をめざす目標に対して、「乾いたタオルをさらに絞れというのか!」という企業・財界から声が出るのは根拠のあることだと言わざるをえません。

 これに排出権市場がからんでくると、さらに奇怪なことが起こります。排出権市場は技術イノベーションに「投資」することが究極の姿となります。ここでは実際に技術イノベーションが「進む」かどうかは問題ではありません。サブプライムローンと同じで「進む」と投資家が判断するかどうか(判断させるかどうか)が問題なのです。「可能性」を買ったり売ったりする世界です。実際に技術が進歩するかどうかは二の次、さらに、実際にCO2が削減されるかどうかは三の次の世界です。

 COP15に集う国家の代表者たちは、半分は削減を本気で考えていない人たち、半分は「技術と市場」の神話に取り付かれた人たち。こんなひとたちに「地球の未来」を託せるのでしょうか。

 私たちは本当に2050年=半減、気温上昇2度未満を実現するために「技術+市場(マネー)」を主体とする削減方法の迷路から抜けだし、「人+自然」を主体とした削減方法に踏み出さなければなりません。

 そこでは「気候正義」を全体の原則とします。

(1)多く排出する者により重い負担と責任を。日本では電力と鉄鋼で4割の排出ですから、半分ちかい責任と負担を負ってもらいます。南の島を救う責任は彼らにあります。

(2)「必要とされる総需要」を仕分けして抑制します。炭素税はその一つです。エネルギーの大量消費が「幸福度」と結びつく時代は終わりました。限定された中での充実した生活こそが「幸福度」を増す「好都合な真実」の時代が到来しています。

(3)市場の直接規制。企業もふくめ社会全体に「排出きっぷ」を割り当て、それを超えた者には課徴金です。暗い時代?いえいえ生産を縮小すると自由時間は増え自然や農業への入り口が増えます。生産縮小で企業が倒産することを想定して、ベーシンクインカムを導入しましょう。
 「キャップ&トレード」は国内のみ。国際市場は認めません。「炭素」をマネーゲームの対象にはさせません。

 温暖化懐疑論者にたいして、その批判者が使う論理に「予防原則」「予防措置」があります。「重大あるいは取り返しのつかない損害の恐れがあるところでは、十分な科学的確実性がないことを、環境悪化を防ぐ費用対効果の高い対策を引き伸ばす理由にしてはならない」という考え方です。

 「技術+市場(マネー)」だのみの温暖化対策は、「予防原則」「予防措置」の原則に反します。いまから40年、一生懸命「技術革新」に励んだけれども、結果として間に合わなかった、ということは大いにありうるのです。その時、多くの島々は沈んでいます。日本の農業も打撃をうけているでしょう。日本の沿岸の都市の多くも甚大な被害をうけているはずです。

 そういう不確定な「予防策」=削減策に、私たちの未来を託することはできません。ここは確実に予防できる政策を選択すべきです。「技術+市場(マネー)」による温暖化防止策を放棄して、「気候正義」の原則にもとづいた上記施策を実施することです。それは経済の縮小、脱成長の道を選択することと重なります。いま、私たちが鳩山政権やCOP15に突きつける要求はそれ以外にはありません。
 COP15には期待しないけど、会場を包囲している人々と共に手を携えて未来を作り出したいと熱く思います。

投稿者 mamoru : 2009年12月11日 21:03

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