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2005年02月08日
■「経済制裁論」と「ヨン様ブーム」に対する井筒監督のパッチギ(頭突き)!
□監督 井筒和幸
□キャスト 塩屋瞬、高岡蒼佑、沢尻エリカ、楊原京子、オダギリジョー、光石研、笹野高史、余貴美子、前田吟ほか
映画が終わりに近づきスクリーンにその気配が漂いはじめた時、私は、思わず「えっ、もう終わり!」と叫んでしまった(もちろん心の中だが)。
1968年という時代。そこに流れる二つの川。
日本人が暮らす場所と在日朝鮮人の居住区を隔てる京都の鴨川。そして、朝鮮半島を南北に分断するように流れるイムジン河。その二つの川を、日本人の男子高校生と朝鮮高校(中高級学校)の女生徒がふとした出会いから共に渡りはじめる物語である。
両校の番長グループが繰り広げる半端じゃないケンカ。過剰なほどの青春の噴出。そして純粋であるがゆえの挫折。映画のクライマックスで、その挫折の悲しみを抱きしめるように、主人公の「コウスケ」が切々と歌う「イムジン河」が心に浸みた。
難しい問題を、愛あり、涙あり、笑いありの娯楽映画に仕上げているのは、さすがである。しかしそこには、今の時代風潮に対する異議申し立てがあるように思う。
一つは、この映画に出てくる「朝鮮」が「韓国」ではなく「朝鮮民主主義人民共和国」だということ。映画にはキム・イルソンの肖像画も描かれる。それが掲げられた教室で学ぶ女子高生にコウスケが恋いをするわけである。また、「一人は万人のために、万人は一人のために」というスローガンもスクリーンに大きく登場する。
拉致事件いらい、北朝鮮への異様なバッシングが続いており、昨今は「経済制裁論」も喧伝されている。そんな中で、娯楽映画とは言え、キム・イルソンの肖像画を登場させるのは勇気のいることではなかったか。(安倍晋三からの「圧力」はなかったのか?)。井筒監督らしい「反骨さ」である。
もう一つは葬式の場面での言葉。日本の「チンピラ」とのケンカで生命を落とした朝鮮高校生の葬儀に出席したコウスケに、老いた在日一世が浴びせせる。
「生駒トンネルは誰が掘ったか知ってるか!」「国会議事堂の大理石は誰が積んだか知ってるか!」。
井筒監督が得意とする「説教」だ。これを余計な演出と思う人は、監督の次ぎの言葉を聞いて欲しい。
「昨日まで朝鮮人を差別していた人たちが、今日はヨン様に夢中になっている。そんなのどう考えたっておかしいですよ。人間というのは学んで、自分の頭で考えて、前進してなんぼのもんでしょう?だからとりあえずソナチアンも、歴史も何にも知らん若い子らも、とりあえず『パッチギ!』を観てよと。そこで考えたり学んだりしてもらえるということに映画を作る意味があると僕は思っていますからね。」
http://movies.yahoo.co.jp/interview/200501/interview_20050121001.htmlより
「ヨン様ブーム(韓流ブーム)」によって、朝鮮と日本のあるべき姿は、かえって見えずらくなったかも知れない。それを、きちっとした歴史を踏まえた上で、人に対する人の関わりの問題として、当たり前に描き切ったところに「パッチギ!」の意義がある。日本の若い役者さんたちに拍手!
投稿者 mamoru : 2005年02月08日 00:08
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監督:井筒和幸
出演:塩谷瞬、高岡蒼佑、沢尻エリカ、楊原京子、尾上寛之、真木よう子、小出恵介、波岡一喜、オダギリジョー、加瀬亮... [続きを読む]
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