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2007年03月26日

 ■ 競争vs学び合い 「全国いっせい学力テスト」に反対する!

 来る4月24日、「全国いっせい学力テスト」(正式には「全国学力・学習状況調査」)が行われようとしています。教育基本法改悪に続き、今国会では教育三法案の改悪が目論まれていますが、学力テストは、公立小・中学校を主要なターゲットにして、学校をランク付け、格差を拡大し、序列化を一層強化するもので、三法改悪の中身を先取りするものです。

 しかし、残念ながら、昨年秋の教育基本法改悪に反対した運動の盛り上がりに比べると、「学力テスト」への批判の声が小さいのが現状です。すでに、都道府県、その下の自治体レベルで「学力テスト」が広範に行われていること、「学力低下」キャンペーンで保護者が不安に陥っていること、などがその原因でしょう。教育の国家統制、その下での市場原理の導入(学校選択制、学校評価、教育バウチャー制度)が、これを突破口にして行われようとしているにもかかわらず、です。

 こうした中、愛知県犬山市教育委員会が、全国の自治体でただ一つ学力テストに参加しないことを、正式決定しました。これで、建前は「自主参加」と言いながら、公立校の100%参加を実現しようとしてきた文科省の目論は見事に崩れました。(毎日新聞記事参照

 私はまったく知りませんでしたが、この犬山市教育委員会は、前から独自の教育理念をかかげて「教育改革」を進めてきており、今回の学力テストに関しては、「競争で学力向上を図ろうとしているテストは、犬山市の教育理念に合わない」「子供の学力評価は全国一律テストではできない」と不参加を決めました。そして、犬山市教委の立場を広く知ってもらうため『全国学力テスト、参加しません』という本を緊急出版しました。

 また、これまで犬山市教委の活動を高く評価してきた教育学者をはじめ、教育格差への警鐘をならしてきた人々が、今週の土曜日に緊急シンポジウムを東京で開きます。

<緊急シンポジウム>
「このままでいいのか 全国学力テスト」

主催:全国学力テスト緊急シンポジウム実行委員会
後援:明石書店

 4月24日、小6・中3のすべての児童生徒を対象にした全国学力テスト(文科省/全国学力・学習状況調査)の実施が目前に迫っています。予備調査の結果が公表されたにもかかわらず、いったいどんなテスト・調査が行われるのか、保護者や教職員の方々にも十分な情報が届いているとはいえません。

 そこで、急きょ、情報交換・議論・問題提起の場としてシンポジウムを開きたいと思います。保護者や教職員・市民のみなさん、教育行政にたずさわる方々、学生・研究者など、さまざまな立場の方々のご参加をお待ちいたしております。

日時:2007年3月31日(土)9:50-12:30[開場:9:30]
場所:日本教育会館 7階 中会議室
     〒101-0003 東京都千代田区一ツ橋2-6-2
     TEL 03-3230-2831
     【アクセス】http://www.jec.or.jp/koutuu/
参加費:500円

呼びかけ人:
  大塚英志(まんが原作者、神戸芸術工科大学)
  小山内美江子(脚本家)
  苅谷剛彦(東京大学)
  斎藤貴男(ジャーナリスト)
  佐藤学(東京大学)
  汐見稔幸(東京大学)
  田中孝彦(都留文科大学)
  中嶋哲彦(名古屋大学)
  藤田英典(国際基督教大学)
  三上昭彦(明治大学)50音順

シンポジスト:苅谷剛彦
         中嶋哲彦
         藤田英典・松下佳代(京都大学)

進行:田中孝彦

【お申し込み】
参加申し込み用紙にご記入のうえファクス、または、Eメールにて(件名に「シンポジウム申し込み」と明記のうえ)お申し込みください。特にご返信はいたしませんので、当日会場にお越しください。(当日参加も可)

【お問い合せ】
明石書店内 シンポジウム係
TEL 03-5818-1177/FAX 03-5818-1179
Eメール: miwa@akashi.co.jp

<参加申し込み用紙>
http://www.akashi.co.jp/osirase/yousi.doc


 これまで、教育基本法に反対する論理は主に「愛国心」教育批判でしたが、安倍の掲げる「学校選択制」「学校評価」「教育バウチャー制度」は、市場原理によって学校を運営し、学校自身を「勝ち組み」と「負け組み」に分けて、予算で差別していこうというものです。まさに新自由主義に沿い、格差是正に逆行するものです。

 安倍は、イギリスのサッチャーが行った「教育改革」(中心はナショナル・カリキュラムの制定とナショナルテストの実施、および、学校査察制度)を真似ているようですが、しかし、サッチャー自身が手本にしたのが「受験戦争」とまで呼ばれた戦後日本の極度に競争主義的な教育でした。

 そのサッチャー改革も、ブレアによる継承をふくめても、ほぼ、破綻したといってよく(テストによる競争激化―>成績不良者の学校追放―>ニートの増大―>学校平等化の声の高まり)、その破綻の後追いをしようとしているのが、安倍「教育改革」と言っていいでしょう。

 このあたりの倒錯した実状に関しては4月に出版予定の岩波ブックレット『イギリス「教育改革」の教訓―「教育の市場化」は子どものためにならない』(阿部菜穂子)に詳しいはずです。

 格差を拡大する「全国いっせい学力テスト」に反対しましょう。


■資料――さらにくわしく知る為に

「モノ申す」姿勢浸透…愛知・犬山市
http://osaka.yomiuri.co.jp/local/lo51209c.htm

検証 地方分権化時代の教育改革  教育改革を評価する
―― 犬山市教育委員会の挑戦 ――
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/00/1/0093850.html

犬山市の教育
http://www.inuyama-aic.ed.jp/i-manabi.h.p/index.htm

投稿者 mamoru : 2007年03月26日 21:53

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