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2011年02月13日

 ■ TPPという名の「八百長政治」にNOを!

 豪雪に、火山噴火に、鳥インフルに、口蹄疫。気候的にも社会的にも、そして政治的にも、厳しい冬が続いています。

そんな中で、エジプトのムバラグ政権が民衆の直接行動によって、ついに、倒されました。アラブ世界で唯一イスライルを「承認」していたエジプトでの「民衆革命」は、アメリカの中東戦略に根本的な見直しを迫るでしょう。オバマは、内心では、ムバラグ政権の継続を願っていたでのでしょうが、先を見越してイニシアチブを取るために、ムバラグに「即時退陣」を迫ったのは、さすが(ペテン師!)でした。

 それに比べて情けないのが日本です。民衆の「即時退陣」要求に対して「もっと現実的に物事を考えるべき」と要らぬブレーキを掛けたのが前原外相。尖閣の時といい、今回といい、この男には「現実」がな~んにも見えていないんですね。

 この「現実が見えない」政治家・前原を中心にした従米・ネオリベ勢力が、学者、マスコミを総動員してを強行しようしているのがTPP(環太平洋経済連携協定)です。「TPPは第三の開国だ」「参加しないと世界の孤児になる」などの、小泉ばりのワンフレーズ政治を展開中ですが、中身の説明は一切ありません。

 しかし、TPPの作業部会には、農業分野だけではなく、医療、法務、金融、通信など24の作業部会があります。ことは「農業」だけの問題ではなく、ほとんどの国内市場を、アメリカに明け渡すことになりかねないものです。ところが、いまでもその全容を国会議員や関係省庁にも明らかにしないまま、「参加」の方向だけは「決定」してる菅政権。まさに「熟議」とは真逆な「八百長政治」です。ウソと張ったりで、反対者を「農業既得権にしがみつく守旧派」よばわりするところまで小泉流です。

 しかし「一回目は悲劇、二回目は喜劇」という諺があるように、いま、人々は、TPP議論の胡散臭さにジワジワと気づきはじめているのではないでしょうか。小泉の時代、いや、もっとさかのぼれば中曽根の「国際国家論」や小沢の「国際貢献論」いらい、日本はずっとアメリカの言いなりになって「開国」に継ぐ「開国」をしてきたではありませんか。その結果が、暗澹たる「無縁社会」「格差社会」「地方の崩壊」。「もういい加減にしてくれ!」というのが人々の偽らざる気分でしょう。

 そうした気分もあってか、昨秋来、TPP反対の動きが強まっています。JAや日本医師会は早々に「反対」「懸念」の表明をしました。地方では議会での意見書採択や首長による政府への「慎重対応」申し入れなども昨年秋から続いています。

 そして市民の側の反対の動きも始まっています。来る、2月16日(水)には参議院会館で緊急のシンポジウムがが行われます。(当日の動画です)

また、26日(土)には、同じく東京で、TPP反対の集会が多彩な人々の呼びかけで行われた後、日本経団連へのデモが予定されています。

 この日本経団連へのデモという発想は良いですね。気候変動交渉での「京都議定書殺し」の背後には日本経団連がいました。もう民主党はいいから、直接日本経団連に異議申し立てをしたい、というい思いは、多くの市民に共通しているところだと思います。

 少し脱線しますが、いまからちょうど35年前、ロッキード疑惑が浮上してきたとき、春闘の行動で丸紅と日経連に押しかけました。丸紅のシャッターを旗竿で「ガシャン」「ガシャン」と叩いても、機動隊は何もできず、ものすごく解放感を味わったことを覚えています。オイルショック以降の「重苦しい」雰囲気が、あれで、いっぺんに吹き飛びました。これを契機に民衆が反転攻勢に転じ、翌年の三里塚決戦へと登り詰めたのでした。経団連へのデモと聞いて、ひょとして、そんな情勢が再びくるのかな、なんて、思ってしまいました。

 東京近辺の人、16日は無理でも26日はぜひ参加してください。
 
 しかしTPP反対の「市民運動」として「先行」しているのは、残念ながら「右翼」です。1月29日(土)に「頑張れ日本、全国行動委員会」が、日比谷公会堂で「亡国TPP断固阻止、民主党内閣打倒!」を掲げて、大集会(シンポジウム)を開きました。そこでは保守の論客の西部邁氏や、いまや「反TPP」論客のニューヒーロー中野剛志氏(26日の集会でも基調講演します)らが、熱弁をふるいました。

 しかもその内容がどれも真っ当。「敵はアメリカの市原理主義だ!」というのです。中野氏が「人を蹴落としても自分が助かればいいという考えが気に入らない!」と訴えると、拍手喝采。人々の気分が、伊達直人現象にもみられるように「自己責任論」から「連帯/分かち合い」へと変わってきていることの表れでしょうか。

 「頑張れ日本、全国行動委員会」や「チャンネル桜」グループの実態は知りません。どこまで「市場原理主義」との対決を本気で考えているのかも。そもそも「尖閣諸島(釣魚島)」問題や、「移民排斥」での彼らの立場は、許せるものではありません。しかし、TPP反対に関する限り「別個に進んで共に撃つ」ことは可能かもしれません。

<参考>
中野剛志:TPPはトロイの木馬──関税自主権を失った日本は内側から滅びる
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2011/01/tpp_5.html


 ムバラグを倒した偉大なエジプト民衆革命について、古くからの知人がこう記していました。「私たちは、『自己決定』を国家のあり方を経由しない狭めた意味に使ってきたのではないか。国家のあり方を変える力のなかにこそ、言葉の原義『自己決定』が生きてくる」と。

 この先輩のひそみに習うと、このTPP反対の闘争やCOP17にむけて政府に「25%削減からの撤退」の撤回をせまる闘争は、まだ「国家のあり方」を変えるようなレベルのモノではありません。政策の「あり方」を変えるレベルです。

 しかしこの国では「政策」の転換が容易でないことは、政権が交代しても「政策」が変わらないことからもよくわかります。そして、TPPへの参加を「決定」してしまうと、その構造がさら固定化していくことになります。国際経済協定が国内法(憲法含む)の上位として君臨し、社会のあり方を規定してくるからです。まさにTPPは「民主主義を滅ぼす」(E・トッド)から問題なのです。

 TPPをめぐって、反対派は、いま、必ずしも劣勢とは言えません。まず、既成勢力の側が一枚岩ではありません。民主党の中にも反対勢力が存在します(鳩山派、小沢派と重なりますが)。態度を棚上げしている自民党の中にも反対派が存在します。経産省と農水省の対立もあります。

 さらに、賛成派のロジックがあまりにも低劣。「農業vs国益」や、前原の「GDPで1.5%しかない農業のために98.5%の産業が犠牲になっていいのか」という発言は、影響を受ける分野が24項にものぼることや、そもそも、日米で関税をゼロにしても、ドル安策によってアメリカへの輸出は増えない、という指摘もあり、逆に「事実を隠蔽している」との反発を呼んでいます。まるで日本相撲協会です。

 そして、先述したように、なによりも人々のトレンドが「競争に勝って生き残る」から「助け合って共に生きる」に変わってきていることです。こうした状況の中では、TPPでどの産業が得をして、どの産業が損をするのか、という損得論ではなく、中野氏がいように「人を蹴落としても自分が助かればいい」という考えは、是か、否か、を正面から問うほうが、説得力があるかも知れません。ここ20年間、ほとんどの人が「蹴落とされた」側ですから、共感を得られるはずです。

 とはいえ、「反対運動」を盛り上げ「政策転換」を実演する妙手があるわけでもありません。取りあえずは、小さな学習会をこまめに開催していきましょう。『TPP反対の大義』がいいテキストだと言われていますが、まだ、手にしていません。中野剛志氏の講演を録画した動画は、You Tube にたくさんありますから、それを一緒に視聴して、議論するのもいいと思います。

 私の近辺の動きでは、3月に、Attac京都が、京丹後の平賀緑さん(有機農業実践)を講師に招いて、学習会を予定しています。直近の動きでは、2月19日(土)に、内橋克人さんの「TPPは日本に何をもたらすか」の講演会があります(午後1時半、京都府農協会館、参考6)。近辺の人で都合のつく方はぜひ参加してみてください。

 「第三の壊国」TPPを断固阻止しよう。
 

投稿者 mamoru : 2011年02月13日 23:27

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