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2007年05月10日

 ■ わいせつ被害の「空自女性隊員」(21歳)が国を提訴 

 現職の女性自衛官が国を提訴。北海道新聞、毎日新聞の記事と情報の転載を依頼する弁護士のメール、及び「訴状」「原告のコメント」です。

「訴状」(PDF)
コメント(PDF)

■北海道新聞(05/09 07:53より

<社会>

 わいせつ被害の空自女性隊員 国に1100万円賠償請求 札幌地裁(05/09 07:53)

 同僚男性からわいせつ行為をされ、被害を相談した上司から逆に退職を強要されたとして、道内の航空自衛隊の部隊に所属する女性隊員(21)が八日、国を相手取り、約一千百万円の損害賠償を求める訴えを札幌地裁に起こした。原告代理人の弁護士によると、現職自衛隊員が国を訴えるのは異例という。

 訴えによると、この女性は昨年九月、勤務中に泥酔していた同僚男性(32)から基地内で押し倒され、無理やり体を触られるなどした。女性は上司数人に相談したが「退職願に(印鑑を)押せよ」「ここまでこじれたら、自衛隊ではやっていけないんだよ」などと、逆に約半年間にわたって嫌がらせを受け続けた。女性は上司に男性の退職か転勤を求めたが、基地側が適切な措置を取らず、長期にわたり精神的苦痛を受けたとしている。

 女性の父親(48)は提訴後、札幌市内で記者会見し、「私は加害者や上司を許すことができません。被害者が泣き寝入りする現状があってはならず、現職のまま闘います」と女性のコメントを代読。さらに父親は、女性から話を打ち明けられた時の心境を「本当につらかった。言葉には尽くせない」と語った。

 同席した代理人の佐藤博文弁護士も「自衛隊には、世間では理解し難いようなハラスメント(嫌がらせ)がある。今回の訴訟は、氷山の一角にすぎない」と強調した。

 これに対し、女性が勤務する基地は、警務隊が今年二月から強制わいせつの疑いで捜査していることを認めたが、退職の強要については「あったかどうかも含め、部内で調査中」と説明。訴状については「正式に受け取っていないので、コメントできない」としている。

■ 毎日新聞
 

女性空士長:同僚のわいせつ行為で国家賠償提訴 北海道

 同僚からわいせつ行為を受けたうえ、退職を強要され精神的苦痛を被ったとして、航空自衛隊北部航空警戒管制団(司令部・青森県三沢市)の道内基地に勤務する女性空士長(21)が8日、国に対して約1115万円の損害賠償を求める訴訟を札幌地裁に起こした。提訴後会見した空士長の父(48)は「(被害は)あってはならないことで、怒りしかない」と述べた。

 訴状によると、空士長は女子隊員寮で就寝していた06年9月9日午前2時半ごろ、泥酔した男性3曹(32)に内線電話で呼び出され、胸などを触られた。上司に被害を訴えたところ、「ここまでこじれたら、自衛隊ではやっていけないんだよ」などと言われたうえ、退職を強要された。自衛隊としての責任の明確化と再発防止を求めている。

 空士長は「私の人権と女性としての尊厳を取り戻すため、国と戦いたい」とのコメントを出した。一方、空士長が勤務する基地の広報担当者は「訴状を受け取っていないのでコメントできない。退職強要の有無については現在、内部調査中」と話した。

 男性3曹のわいせつ行為をめぐっては、空士長は千歳地方警務隊に被害届を提出している。【芳賀竜也】

毎日新聞 2007年5月9日 0時29分 (最終更新時間 5月9日 2時32分)


 ■佐藤弁護士からのメール

Subject: 女性自衛官人権訴訟を提起しました

 札幌の佐藤博文です。

 本日、北海道内にある航空自衛隊通信基地の女性自衛官(21歳)が、上司に強姦まがいの行為をされ、しかも被害者である彼女にいじめ、退職強要等のパワハラを半年以上にわたって行なったという問題で、札幌地裁に慰謝料1000万円と、退職前提の年休消化として意思に反して取らせた年休の賃金相当額について、国家賠償請求訴訟を提起しました。

 お父さん(東京在住)が、彼女に北海道・札幌の弁護士を紹介しようと、東京の法律事務所に相談し、その事務所がイラク訴訟・自衛隊110番をやっている私の事務所を知っていたので紹介し、私に繋がったという経緯です。その意味では、全国弁連の「自衛官・家族110番」活動の成果ということができる事件です。

 本訴訟は、驚くべき自衛隊の職場実態、女性自衛官への人権侵害、自衛隊幹部の反人権思想を告発する裁判となります。
 何といっても、いったんは退職を決意するも、思い止まり、現職のまま裁判を闘うことを決意した彼女に、私自身励まされる思いです。彼女の勇気に敬意を表しつつ、彼女を励まし支えることが重要だと考えます。
 全国の原告団や弁護団の皆さん、あるいは人権団体、平和団体などの方々に、応援や支援をお願いすることになるかと思いますので、宜しくお願いします。

 すでにテレビで報道されており、あすの各紙朝刊に出ると思います。防衛省昇格、イラク特措法延長法案など、海外で戦争をすることになりつつある中、軍隊は本質的にこういう問題を孕んでいるんだ、こういう軍隊を外国に出して殺戮行為に従事させるのか、という問題提起にもなっていると思います。彼女自身、今のような自衛隊を海外に出したら大変なことになります、と言っています。

 訴状は、固有名詞が分からないように、ABC・・・と表示し、あるいはマスキングしてあります。本人のコメント(提訴後の記者会見でお父さんが代読した)と合せて、お送り致します。


 転送して結構です。ぜひ多くの人に知っていただき、考えていただきたいです。本人の意向でもあります。

 ところで、昨日は提訴のために有給をとっていた彼女ですが、今朝出勤したときに、勤務場所を現在の本部の庶務から、庁舎内で「奥」とか「倉庫」といわれている6畳ほどの何もない部屋に行けと命令されたと、今朝8時頃、泣きながら電話が入りました。しかも、その理由が「お前は部隊の業務を滞らせているから」と言われたとのこと。彼女は、それまできちんと仕事をしていて文句一つ言われたことはないし、昨日は年休を取り、外出許可をもらって出ているのだから、「業務ができていない」と言うのは濡れ衣と怒り心頭。
 なぜ配置換えか上司に理由を問い質し記録すること、弁護団も対応するから落ち着ついて行動すること、提訴のコメントで「現職で裁判を行なうことがどれだけ難しく、また、どれだけ大変かは理解しているつもりです」と啖呵を切ったのだから頑張れ、とアドバイスしたところです。

 彼女に対する全国的な激励と支援の方法について、皆さんのアドバイスをいただければと思います。

 
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    弁護士 佐 藤 博 文
Tel 011-231-1888 Fax 011-281-4569
E-mail hirohumi@hg-law.jp
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投稿者 mamoru : 2007年05月10日 00:14

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